このページでは、私たち音楽出版社・楽譜出版社の立場から、楽譜を安心してご利用いただくために必要な基本的な考え方と注意点をわかりやすく整理しています。 ぜひご一読いただき、健全な音楽活動と著作権の尊重にご理解とご協力をお願いいたします。
目次
楽譜とは?
楽譜は、作曲・編曲された音楽作品(音楽著作物)を視覚的に記録・表現したものであり、音楽の学習、演奏、創作において欠かせない役割を果たす重要な媒体です。
つまり、市販の楽譜は、音楽著作物を視覚的に記録・表現した商品です。
楽譜には、音楽作品の創作者である作曲者・作詞者、作曲者・作詞者から著作権の譲渡を受けた音楽出版者(著作権者)、著作権者から委託を受け、著作物の利用を許諾する音楽著作権管理事業者、楽譜に創作的加工を加えた編曲者・校訂者・浄書者、楽譜を編集・制作・発行・流通させた楽譜出版社、さらに電子楽譜を配信・販売する電子楽譜販売事業者といった、複数の権利者や関係者が、立場と役割の異なるかたちで複合的に関与しています。
つまり、楽譜に関与する権利は著作権だけでなく、民法も関係する場合があります。
楽譜の利用にあたっては、これらの関係者が持つそれぞれの権利を正しく理解し、適切に取り扱うことが必要です。
たとえば、編曲を行いたい場合、楽曲の著作者(連絡先は音楽出版者であることが一般的)の許諾が必要です。楽譜のコピーや電子化等、楽譜の利用方法などについては、出版された楽譜を管理する出版社への申請が求められることがあります。電子楽譜をコピーする場合、楽譜出版社に加え、電子楽譜販売事業者の許諾も必要です。
このように、利用の内容によって申請先や必要な手続きが異なるため、正確な理解と対応が求められます。
楽譜購入の原則
市販されている楽譜は、制作・編集・印刷・流通といった工程を経て商品化されたものであり、その価格には、著作権者への正当な対価や、出版社・制作関係者の仕事に対する報酬が含まれています。
したがって、楽譜を正規のルート(書店、楽譜販売サイト、電子配信サービスなど)で購入し、著作権と出版権を尊重した利用を行うことは、文化の持続的な発展を支える重要な行為です。
楽譜は必要な分を適切に購入しなければいけません。違法コピーや無断配布といった不正な利用は、作り手や出版者の権利を侵害するだけでなく、良質な楽譜の制作や流通そのものを危うくする原因となります。音楽文化を支える一人ひとりとして、楽譜を適切に購入し、正しく利用することが求められています。
現代では、コピー機を使って簡単に印刷物をコピーすることが可能です。しかし、著作権者の許諾を得ずに楽譜をコピーして人数分に増やす事は出来ません。YMDミュージックから出版されている楽譜は著作権法をはじめとする法律により保護されており、弊社の許諾を得ずにコピーした楽譜の第三者への配布、譲渡、共有する事はいかなる方法においても禁じられております。
楽譜に関係する法律と権利について
楽譜は、作曲・編曲された音楽作品(音楽著作物)を視覚的に記録・表現した媒体であり、市販の楽譜は商品です。
著作権法と民法
楽譜には、複数の権利者や関係者が、立場と役割の異なるかたちで複合的に関与しており、市販の楽譜をコピーする場合、以下の許諾を得る必要があります。
- 楽譜で使われる音楽(音楽著作物)の使用に関わる許諾[著作権]
- 作曲者・作詞者・編曲者(著作者(著作権者))
- 音楽出版者(著作権者)
- 音楽著作権管理事業者(著作権者から委託を受け、著作物の利用を管理・許諾を行う者)
- 楽譜の利用方法に関する許諾[民法]
- 楽譜出版社
- 電子楽譜販売サービスの利用規約や利用契約に関する許諾[民法]
- 電子楽譜販売事業者
これらの権利は、それぞれ独立しており、すべての権利者の許諾を得る必要があります。
例えば、楽譜出版社から許諾を得たからコピーできるわけでなく、著作権者(一般的に音楽著作権管理事業者)の許諾も得る必要があります。電子楽譜をコピーする場合、電子楽譜販売事業者にも許諾を得る必要がある場合があります。
一般的に、楽譜の利用に関する著作権の観点からの許諾は音楽著作権管理事業者が行っています。楽譜の利用方法に関する民法の観点からの許諾は楽譜出版社、電子楽譜販売事業者(電子楽譜のみ)が行っています。
権利者が許諾できるのは、権利者が有する権利の範囲内となります。許諾申請を行う際、誰がどの権利を有するか、十分に確認をしたうえで許諾申請を行いましょう。
尚、YMDミュージックは、楽譜のバラ売りを実施しており、楽譜を必要な部数だけ購入することが可能であり、よって複製を行う必要がないと考えているため、楽譜複製利用の許諾申請を受け付けておりません。あらかじめご了承ください。
その他、詳細はこちらをご覧ください。
所有権と著作権
紙媒体として販売されている楽譜は、民法第85条に定める「物(有体物)」に該当します。そのため、楽譜を購入した者は、その物理的な楽譜冊子に対して所有権を取得し、これを自由に保有・管理・譲渡・貸与することができます。所有権は絶対的な権利とされ、他人の干渉を排除して自由に使用できる原則があるため、一見すると購入者は楽譜を「自由に使える」と考えがちです。
しかし、楽譜に記載されている音楽作品そのもの(楽譜の内容)は、著作権法によって保護される無体財産(著作物)です(著作権法第2条第1項第1号)。楽譜は、その著作物を記譜という形で視覚的に表現したものであり、そこに含まれる著作物の利用には著作権者の許諾が必要です。
このように、楽譜には「物」としての所有権と、「内容」としての著作権という二重の権利構造が存在します。楽譜を所有しているからといって、以下のような行為がすべて自由にできるわけではありません。
- 楽譜をコピーして他人に配る(複製権・頒布権の侵害)
- 楽譜に基づき演奏を録音・配信する(録音権・公衆送信権の侵害)
- 楽譜の内容を改変して新たに出版する(二次的著作物の利用)
- 複数人または団体等で所有権を主張し、その人数分複製する(複製権・頒布権の侵害)
このように、所有権の効力には著作権による制限がかかるため、物理的に楽譜を所持しているだけでは、その内容を自由に利用することはできません。著作権と所有権は異なる法体系に属する独立した権利であり、相互に干渉しつつも明確に区別されるべきものです。
楽譜を「買うこと」はその「物」を得ることにすぎず、そこに記された音楽を自由に使えることとは別問題であるという点に、注意が必要です。
YMDミュージックが楽譜出版する弊社出版作品と他社出版作品
弊社からは弊社が著作権を管理する弊社出版作品と他社が著作権を管理し、編曲出版利用許諾を得て販売している他社出版作品の楽譜を販売しております。
他社出版作品には、国内出版社が著作権を管理している内国作品と海外出版社が著作権を管理している外国作品があります。
他社出版作品は、弊社が出版することを前提とした編曲利用および出版利用の許諾を得て利用しています。よって、弊社が出版している作品と同様の販売方法は出来ず、販売方法に限られております。
YMDミュージック出版作品(作曲作品、著作権消滅作品の編曲作品)
YMDミュージックが運営するYMD MUSIC WEB SHOPで、フルスコア、パートスコアを1部よりご購入いただけます。セット販売も行っております。
Piascore楽譜ストアにて電子(PDF)楽譜をフルスコア、パートスコアを1部よりご購入いただけます。セット販売は著作権侵害を助長する恐れがあるため行っておらず、バラ売り(単品販売)のみとなります。
他社出版作品(編曲作品)のうち内国作品
YMDミュージックが運営するYMD MUSIC WEB SHOPでは「フルスコア1部、パートスコアセット」または「パートスコアセット」を販売しております。著作権利用許諾や管理の都合上、弊社ウェブストアでのバラ売り(単品販売)は基本的に行っておりません(フルスコアを単品販売している場合やその他例外あり)。例えば、パートスコアA、B、CのうちAが不足する場合に於いても「パートスコアセット」をご購入頂く必要があります。
Piascore楽譜ストアにて電子(PDF)楽譜のフルスコア、パートスコアを1部よりご購入いただけます(一部例外作品があります)。
他社出版作品(編曲作品)のうち外国作品
YMDミュージックが運営するYMD MUSIC WEB SHOPでは「フルスコア1部、パートスコアセット」のみ販売しております。著作権利用許諾や管理の都合上、弊社ウェブストアでのバラ売り(単品販売)は基本的に行っておりません(フルスコアを単品販売している場合やその他例外あり)。例えば、パートスコアA、B、CのうちAが不足する場合に於いても「フルスコア1部、パートスコアセット」をご購入頂く必要があります。
電子楽譜の販売は行っておりません。
他社出版作品の販売上の制約について
他社出版の楽譜作品については、バラ売りができない、電子楽譜として販売できないなど、さまざまな制約がある場合がございます。特に外国作品に関しては、セット販売のみが認められており、必要以上の楽譜をご購入いただく場合もあります。
しかし、外国作品がお客様のお手元に「楽譜」として届くまでには、いくつもの過程が存在します。弊社では、当該外国作品の日本国内における管理を委託されている出版社や著作権管理事業者を通じて、海外の原出版社や著作権管理団体への許諾申請を行っております。これらの申請にはさまざまな経費が発生し、また、著作権管理事業者による外国作品の管理方針や、海外原出版社・著作権管理団体のルールに従う必要があります。そのため、販売方法に一定の制約が生じてしまいます。
弊社が他社出版の外国作品を扱い、日本国内で皆様のお手元に楽譜としてお届けできるのは、こうした関係企業・団体の存在と協力によるものです。
ご購入にあたり、お客様にご負担をお願いする場合もございますが、以上のような事情をご理解のうえ、引き続き楽譜をご利用いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
楽譜のコピーについて
市販の楽譜は、権利者の許諾を得ずにコピーすることはできません。楽譜をご利用の際、フルスコアやパートスコア(パート譜)が、指揮者、指導者、演奏者等の人数に対して不足している場合、不足分の楽譜は必ずお買い求め下さい。
例えば、ご購入頂いた楽譜を原本として著作権者の許諾を得ずにフルスコアやパートスコアをコピー印刷する行為(プルト増し)や、書き写してプルト増しをする行為、楽譜作成ソフト等を使って再作成してプルト増しをする行為、フルスコアを元にパートスコア(またはその逆)を生成する行為は出来ません。
電子楽譜の購入、利用について
近年、タブレット端末やスマートフォンの普及によって電子楽譜を扱う機会が増えています。情報社会の特徴として「短時間に品質を落とさずに大量に複製が出来る」「SNSや電子メール、大容量送信サービスを用いて、瞬時に大容量のデータを世界中に送信が出来る」といった事が挙げられ、便利な世の中となりました。
しかし、市販の楽譜データは音楽著作物を視覚化、記録したものを商品化したものであり、それは著作権法や民法によって保護されています。さらに、電子楽譜販売事業者が運営する販売サイトの利用規約に則った利用をしなければいけません。取り扱い方を誤ってしまうと著作権侵害として罰せられる場合や権利者が被った損害を賠償しなければならない場合があります。
詳しくはこちらをご覧ください。
楽譜の購入・利用のケース別解説
楽譜購入および利用については、主に以下の2つのケースが考えられます。
- 演奏団体代表(担当)者やイベント主催者等が人数分の楽譜を購入し、演奏者に配布するケース
- 各演奏者が自ら楽譜を購入するケース
楽譜には、印刷された紙の印刷楽譜と、デジタル形式で販売される電子楽譜があります。また、出版形態によって、自社出版楽譜・他社出版楽譜(内国作品/外国作品)に分類され、それぞれで購入形態や利用条件が異なります。以下に、ケース別に詳細を解説します。
演奏団体代表(担当)者(イベント主催者等)が人数分の楽譜を購入し、演奏者に配布するケース
このケースでは、代表者が演奏に必要な人数分の楽譜を一括で購入し、各演奏者に配布して使用する形です。学校の吹奏楽部、市民楽団、演奏会の主催団体などで一般的に見られます。
自社出版楽譜・他社出版(内国作品)の場合
- 印刷楽譜
- 必要なパートスコアを必要な人数分だけ購入できる「バラ売り対応」が可能です。
- 演奏団体の編成に合わせて柔軟な購入ができます。
- 電子楽譜
- 電子楽譜は、購入者本人のみが利用できる形式で販売されており、代表者や主催者が購入した電子データを他の演奏者に配布することはできません。
- 演奏者ごとに個別に購入していただく必要があります(人数分のライセンスが必要)。
他社出版(外国作品)の場合
- 印刷楽譜:
- バラ売りは行っておらず、「フルスコア+パートスコアセット」での販売が基本です。(フルスコアのみ、作品によって例外あり)
- 編成によっては必要以上に譜面が含まれている場合があり、追加セットの購入が必要になることもあります。
- コピーによる複製・再配布は禁止されています。
- 電子楽譜
- 取り扱っておりません。
演奏者が楽譜を購入するケース
このケースでは、各演奏者が自分のパートスコアを自ら購入し、使用する形態です。アマチュア奏者や個人練習、プロジェクト型の演奏参加などに多く見られます。
自社出版楽譜・他社出版(内国作品)の場合
- 印刷楽譜
- 必要なパートスコアのみを個別に購入でき、効率的です。
- 電子楽譜
- 演奏者自身が各自で購入し、個別に使用することができます。
- 第三者が購入して提供することはできません。
他社出版(外国作品)の場合
- 印刷楽譜
- パートスコア単位での購入はできません。
- 個人で使用する場合でも、セットでの購入が必要です。(フルスコアのみ、作品によって例外あり)
- 電子楽譜
- 取り扱っておりません。
著作権と利用許諾に関する注意
楽譜は、正規に購入したものであってもコピーや共有・再配布は原則禁止されています。特に電子楽譜は、個人利用に限定されたライセンス商品であり、他人への配布や共有は、著作権侵害に該当する可能性があります。使用する人数分の正規購入が必要です。
楽譜を違法コピーするとどうなるか
楽譜を違法コピーすると出版社、著作者(作編曲者)はもちろん、楽譜を違法コピーした人が不利益を被ることになります。
楽譜は購入されることで出版社、著作者に利益を得ることが出来、その利益を原資に新たな創作活動を行います。
しかし、楽譜を違法コピーするという事は出版社や著作者が本来得ることが出来る利益を得ることが出来なくなります。利益が得られないと、原資が無いので正常な創作活動や、制作・出版活動に困難を来し、新しい作品や皆様の必要とされる作品を創作することが困難になります。新しい作品を世に出せなくなる場合もあります。その結果、演奏者は新しい作品や演奏したい作品の楽譜を手に入れることが出来なくなります。
著作権侵害の罰則等
楽譜は著作権法によって保護されており、著作者の利益を不当に害する権利侵害を行うと、刑事罰を課され(著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害等は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金等)、民事請求をされる場合があります。
楽譜を違法コピーする行為について
本来支払うべき対価の支払いを逃れるがために時間をかけて楽譜を作成したり、コピー機を用いてコピーするより、違法コピーに費やす時間は音楽を楽しむ時間を充てた方が良いのではないでしょうか。刑事罰等を課されるリスクを負って違法コピーを行うより楽譜を購入したほうが良いのではないでしょうか。 以上の通り、楽譜の違法コピーは全くメリットがありません。音楽文化の健全な発展のため、違法コピーの防止に皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
番外編:「楽譜の不足分のコピーを認めます」と記述のある他社出版社様の楽譜取り扱い
他社出版社様に於いて、「楽譜の不足分のコピーを認めます」と記述のある会社様があるとご意見をいただきました。これは、いわゆる民法の観点からの楽譜の利用方法に関する許諾であり、著作権に関する許諾は含まれていません(著作権者である場合は除く)。
楽譜出版社が著作権者でない場合、”無料でコピーして良い”という意味ではなく、JASRAC等の音楽著作権管理事業者(出版権を有する著作権者)に出版利用手続きが必要です。
JASRAC申請の場合はJ-RAPP申請フォーム中にある”既存の楽譜をコピーして使用”に出版者への連絡なしにチェックを入れて良いという事になります。電子楽譜の場合、電子楽譜販売事業者に販売サービス利用規約に関する許諾を得る必要がある場合があります。
著作物を利用する場合、著作者や著作権管理者から利用の許可を得る必要があります。印刷楽譜だと出版(複製)権、電子楽譜だと公衆送信権が関わってきます。
楽譜を正しくご購入いただき、楽譜を正しくご利用頂くことで新たな作品が生まれます。繰り返しになりますが、音楽文化の健全な発展のため、不正コピーの防止に皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
関連項目
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