実際の現場を想定した音楽著作権FAQ

目次

Q.著作物(楽譜)の複製(コピー)とはどのような事ですか?

A.コピー機を使って別の紙に写し取る行為をはじめ、書き写す行為、楽譜作成ソフトを使って再作成する行為、電子著作物の データのコピー(電磁的複製)、印刷、メール送信、ファイル共有サービス等を用いたデータの受け渡しは著作物の複製となりま す。また、スキャナーやカメラ等を用いて電子化する(デジタルデータにする)行為も複製となります。

Q.楽譜を著作権者の許諾を得ずに複製出来るのはどのような場合ですか?

A.楽譜の複製について”基本的には複製出来ない”と考えていただきたいと思います。しかし、著作権法で例外が定められており、 それに該当する場合は著作権者の許諾を得ずに複製する事が出来ます。その一部をご紹介致します。

  1. 私的利用の為の複製 著作権法における私的利用の範囲は個人または家庭に準ずる限られた範囲内です。これを越える範囲、例えば団体内での利 用に関連した複製は出来ません。
  2. 学校その他の教育機関に於ける複製等 営利を目的をしない教育機関の正課教育の授業内に於いて、授業を受ける者自身が自ら複製する場合に限られます。営利目 的の教育機関、課外活動にあたる部活動や同好会、用途や複製部数等から権利者の利益を不当に害する場合は対象外となり ます。
  3. 私的利用の範囲内に於ける印刷楽譜の電子化 私的利用の範囲内に於いて、印刷楽譜を電子化してタブレット端末等で利用する事が出来ます。電子化した楽譜データを共 有する事は出来ません。
  4. 譜めくりの都合による複製 実際に演奏するにあたり、譜めくりの都合で複製する事は必要最低限に限り認められます。ただし、楽章全体や楽曲全体を コピーする事は著作者の利益を不当に害すると考える事が出来るため出来ません。

Q.楽譜セットに含まれる楽譜が不足する場合、複製して補充する(人数分印刷する)ことは出来ますか?

A.楽譜は、著作権者の許諾を得ずに複製することは出来ません。
ご購入頂いた楽譜が演奏団体の人数より少なく楽譜が不足する 場合に於いて、不足楽譜を複製して増やす事(プルト増し)は著作権者の許諾を得ずに利用しても良い例外(私的複製)には該当しません。また、書き写してプルト増しをする行為、楽譜作成ソフトを使って再作成してプルト増しをする行為、フルスコアから パートスコア(またはその逆)を生成する行為は出来ません。楽譜が不足する場合は楽譜を購入する、または著作権者に複製許諾を得る必要があります。
電子(PDF)楽譜の場合、必要分の楽譜データを購入する必要があります。電子楽譜はまとめ買いには向いておらず、楽譜を利用する方による個人単位でのご購入をお願い致します。弊社は出版楽譜の単品販売(バラ売り)を行っており(一部例外作品あり)、必要な楽譜のみをご購入いただく事が出来ます。楽譜は必ずご購入下さい。

Q.フルスコアからパートスコアを作って良いのですか?

A.フルスコアから複写・複製してプルト増しをする行為は著作権者に無断で行う事は出来ず、楽譜を購入する、または著作権者に複製許諾を得る必要があります。弊社はパートスコアを各パートごとに販売(バラ売り)しております(一部例外作品あり)。楽譜は必ずご購入下さい。

Q.印刷楽譜を電子化して電子メール等で送信、またはファイル転送サービスやオンラインストレージサービスにアップロードして共有して良いのですか?

A.印刷楽譜を電子化することと電子メール等で送信する事、ファイル送信サービスやオンラインストレージサービスにアップ ロードして共有する事のそれぞれが複製行為であるため、著作権者にそれぞれの行為の複製許諾を得る必要があります。

Q.非営利、無収入、無報酬の演奏会であれば著作権者の許諾を得ずに自由に使って良いのですか?

A.非営利、無収入、無報酬の演奏会やイベント等に於いて、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用出来るのは演奏(上映)利用のみです。例えば、非営利、無収入、無報酬の演奏会を理由として楽譜を複製して演奏に利用することは出来ません。これは著作権の中の出版(複製)権に当たる項目であるからです。また、上記演奏会に於いて、著作者の許諾を得ずに編曲することも出来ません。これは著作権の中の著作者人格権に当たる項目であるからです。上記演奏会での楽譜利用で複製が必要な場合や編曲した作品を利用する場合は必ず著作権者の許諾が必要となります。

Q.1つの楽譜の所有権を複数人で主張している場合、所有権を主張する人数分に複製することは出来ますか?

A.楽譜を”物”として所有権を複数人で主張(楽譜の共有)しても、楽譜の著作権(書き記された情報の権利)は著作権者にあるた め、著作権者の許諾を得ずに所有権を主張する人数分に楽譜を複製することは出来ません。

Q.参加型イベントや演奏会の参加型合奏の際に参加者にイベント開始時に楽譜を配布して終了時に回収する(一時的な複製)ならば著作権者の許諾を得ずに複製することは出来ますか?

A.たとえ回収して廃棄することを前提としていても、楽譜を著作権者の許諾を得ずに複製する事は出来ません。必ず必要分の 楽譜をご購入下さい。

Q.コンクールやイベントに於いて、主催者や録音業者等から楽譜の提出(提供)を要求された場合、楽譜を著作者の許諾を得ずに複製することは出来ますか?

A.このような場合は著作権者の許諾を得ずに利用しても良い例外(私的複製)には該当せず、一時的な複製(演奏終了後に廃棄)で あっても楽譜を著作権者の許諾を得ずに複製することは出来ません。弊社は単品販売(バラ売り)しており、必要な楽譜を必要数だけご購入できます。イベント主催者や録音業者等に提出する楽譜をお選びの上、ご購入下さい。

Q.ピアノ(またはその他楽器)伴奏付作品を演奏することになり、伴奏者の楽譜を準備することになりました。この場 合、伴奏者用の楽譜を著作権者の許諾を得ずに複製することは出来ますか?

A.このような場合は著作権者の許諾を得ずに利用しても良い例外(私的複製)には該当せず、一時的な複製(演奏終了後に廃棄)で あっても楽譜を著作権者の許諾を得ずに複製する事は出来ません。伴奏者の楽譜は必ずご購入下さい。

Q.授業の成果発表会に於いて、著作権法に定められた権利制限の範囲内で複製された楽譜を使うことは出来ますか?

A.著作権法では、特定の場合では、一定の条件のもとで著作者の許諾を得ずに著作物を自由に利用できる(権利制限)と定められています。その中の1つに、「学校等の教育機関での複製」があり、「教育機関において」「教員または授業を受ける者が」「授業の過程で利用するために」「必要と認められる限度内で」楽譜を複製(コピー)することが出来ます。
ここで言う“授業”とは、「学校その他の教育機関の責任において、その管理下で教育を担任するものが学習者に対して実施する教育活動」を指し、成果発表会に向けて行われる授業は、上記”授業”に該当する(権利制限の範囲内)としても、成果発表会(有料・無料問わず)は上記”授業”に該当しない(権利制限の範囲外であり、著作権法第49条(複製物の目的外使用等)に該当する)と考えられ、著作権者の許諾を得ずに複製する事は出来ません。
ご自身が購入された楽譜を著作権法30条(私的使用のための複製)に定められる範囲内で複製、つまり、ご自身が使うために複製し、授業の成果発表会を含む演奏会で使用することにつきましては、著作権法第49条には該当しない(一般的に、演奏会は「演奏」を公衆に提示する(演奏権が関わる)機会であり、「楽譜」を公衆に提示する(出版権が関わる)機会ではない)と考えられるため、必要最低限度に限り著作権者の許諾を得ずに楽譜を複製して使用することが出来ます。

Q.『必要最低限のプルト増しは許容する(不足分のコピーを認める)』と記載のある出版楽譜は、無料でコピーして良いのですか?

A.楽譜(市販楽譜、レンタル楽譜ともに)をコピーする場合、「①(民法の観点から)楽譜をコピーしても良いという利用の方法に関する許諾」を楽譜発行者から、「②(著作権法の観点から)著作物を利用することに関する許諾」を著作権者から許諾を得る必要があります。楽譜発行者と著作権者の2者に許諾を得る必要があります。
『必要最低限のプルト増しは許容する(不足分のコピーを認める)』という記載は、楽譜発行者として「①楽譜をコピーしても良いという利用方法に関する許諾」を示す文章です。そのため、著作物(音楽)の利用申請については、出版権を管理する著作権者に出版利用手続きが必要です。

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